こんにちは。佐賀環境フォーラム学生スタッフの山下です。第7回となる今回は佐賀大学 農学部 准教授である徳田 誠 先生に「佐賀平野のトンボ類はなぜ減少しているのか」と題して講演していただきました。
実は、ただの虫が重要!?
さて、皆さんに質問です。「害虫」、「絶滅危惧種」、「ただの虫」と呼ばれる虫がいますが、この違いは何かわかりますか?
答えは、生息している量です。
「え!?人間に及ぼす影響じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるのではないのでしょうか。同じ虫でも大発生したら害虫と呼ばれ、激減したら絶滅危惧種と呼ばれる。なんだか不思議な感覚ですよね…。実は害虫対策も絶滅危惧種対策も目指すところは同じで「ちょうどいい量に戻す」ということなのだそうです。
なぜトンボは減少しているのか?
さて、ここからが本題です。なぜトンボは減少しているのか。
以前はよく見られた赤とんぼですが、2000年から2015年の15年間で10分の1以下にまで減少。また、地点によって種数・個体数は異なり、周囲に水田が少ないほうが個体数が多い傾向にあるそうです。
「調査の結果、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため断定できないが、浸透性殺虫剤が主要因の可能性が高い」とのことです。特にフィプロニルやネオニコチノイドという成分は強力な殺虫活性があり、フィプロニル処理をポット試験で行うと3日後にヤゴが全滅してしまうことに驚きました。
これらの農薬は直接的な要因だけでなく、トンボがつかまるような大型の水生植物を減らしたり、えさを減らしたりといった間接的な要因も引き起こすということです。農薬は農作業をする上でとても便利なものですが、これからは生態系に与える影響にも考慮していきたいですね。
将来トンボが回復する!?
上で挙げた浸透性殺虫剤ですが、これらはうんか対策で導入されました。しかし、現在ではウンカに耐性が出てきてしまい、ほかの農薬に切り替わってきているということです。土壌に含まれている分があるため、すぐにとはいきませんがいずれ回復する可能性もあるのだとか。以前のようにたくさんのトンボが見られるようになってほしいですね。