佐賀環境フォーラム20周年記念事業

佐賀環境フォーラムは、佐賀大学と佐賀市が連携して開催する環境教育事業として平成13年度に始まり、令和3年度に20周年を迎えました。20周年を記念し、佐賀環境フォーラム公式ホームページに、これまでの活動内容について掲載する運びとなりました。佐賀環境フォーラムに参加したことのある方は懐かしく感じられることでしょう。また参加したことがない方も、ぜひご覧いただき、佐賀環境フォーラムを受講するきっかけになれば幸いです。


ご挨拶

佐賀環境フォーラム20年の『これまで』と『これから』

佐賀環境フォーラム実行委員会委員長 岩本諭
(佐賀大学全学教育機構長)

佐賀環境フォーラム(以下、フォーラムといいます。)は、佐賀市と佐賀大学との連携協働事業として2001年に事業を開始してから、2021年に20年周年を迎えることができました。当フォーラムの設置の背景には、2000年から2015年を達成期間とする国連宣言(ミレニアム開発目標、MDGs)、同じく2002年に国連で採択された「持続可能な開発のための教育」(ESD教育、2005年から2014年の10年間の取組)など、環境、貧困、ジェンダー、疾病等の世界規模の課題に対して、各国政府が取り組むことが求められていた時代の要請があり、また後者のESD教育が日本政府が国連に提唱した取組であったことから、国や自治体をはじめとして多くの教育機関において「持続可能」をキーワードとする教育の展開が始まった時期でもありました。

佐賀においても、従来から自然の保護、環境問題に取り組んできた佐賀市と、環境問題について複数の専門分野の研究者が研究・教育および地域貢献を通じて活動を行ってきた佐賀大学が、「佐賀の環境」をテーマとする教育を、連携・協働の下で実践していくこととなり、両者がともに主体的に取り組む事業として、公開討論等を行う「場」を意味する「フォーラム」という名称を戴き開始されました。

当フォーラムは、当初から、佐賀大学の特色ある教養教育プログラムとして開講されてまいりました。2011年に「社会との接続」を教育理念に掲げた全学教育機構が設置され、当フォーラムは、同機構において、学生が主体的に課題に向き合い思考するアクティブ・ラーニング科目(本学では「インターフェース科目」といいます。)として位置づけられました。本学教員だけではなく、学外の研究者や実務家の多くを講師として御招きし、また学外授業として市民団体や多く市民の皆様が参加する複数の体験学習の機会を取り入れ、佐賀県内や佐賀市内を実践的な学習フィールドとする講義を展開してまいりました。

今般、事業20年周年を迎えましたが、これからも佐賀の環境課題に学生一人ひとりが正面から向き合い思考と実践を探求する教育プログラムとして、「佐賀環境フォーラム」の充実を図ってまいります。

佐賀環境フォーラムのこれまでの20年とこれからの20年に寄せて

佐賀環境フォーラム実行員会副委員長 森清志
(佐賀市環境部部長)

佐賀環境フォーラム(以下、「フォーラム」という。)は平成13年度から佐賀大学と佐賀市が連携して開催する環境教育として始まり、令和3年度に20周年という節目を迎えました。当フォーラムは、佐賀大学の先生はもとより、最先端のフィールドで活躍する外部講師の先生から最新の環境問題について学ぶことができるという特徴があり、これまで多くの学生と市民がともに学ぶ場として、非常に重要な場となっています。

20年前と今を比べてみると、20年間で自然環境及び人々の環境への意識は随分変化してきています。佐賀市では、「トンボ王国・さが」づくりを進めていますが、赤トンボの減少が著しく、全国的にもトンボの減少が懸念されています。水辺に生息するトンボは環境変化を測る「リトマス紙」とされ、自然環境の急激な変化が窺い知れます。また、レジ袋を使用するのでなくマイバックを持参したり、少しでも省エネ性能が高い家電製品や電気自動車を購入するなど、地球環境に対する人々の意識はさらに高まってきました。

目まぐるしい環境変化の中で、当フォーラムが20年間あり続けたのは、常に新しい情報を様々な角度から提供し続け、講義形式にとどまらず、環境問題を自分事として捉え、課題解決に向けた主体的な行動を実践していく授業形態をとっていたためだと考えます。そして、「広く環境学習の機会を提供し、正しい環境認識を有し、環境配慮意識の高い人材を育成する」という当フォーラムの理念は、これからも引き継がれ、質の高い教育と人材育成に寄与してくれることと思います。

2015年9月の国連サミットでは、「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す17の国際目標が掲げられました。これからも多くの学生や市民が当フォーラムに参加し、これらの目標達成に向け、一丸となり取り組んでいく機運の醸成に一役を担ってくれることと期待をしています。

SDGsに向けた佐賀環境フォーラムの役割

佐賀環境フォーラム実行員会事業部長 兒玉宏樹
(佐賀大学総合分析実験センター准教授)

「環境危機」の原因は増えすぎた人間が無計画な開発と使い捨て社会構造を伴う我儘な行動を環境等のBOP (Base of piramide)が支えられなくなったためであることは紛れもない事実として捉えられています。2002年12月の国連総会決議ESD(持続可能な開発のための教育の10年)とともに20年間歩き続けた佐賀環境フォーラムは知識人と実態社会、学生と市民、行政と企業等の主体間が交流するプラットホームとして機能し、NPO団体、学生団体を生み出す下地としての役割、相互扶助する役割を担い、“環境危機を招いた我々がBOPの恩恵を受けることで相互に加害者となり被害者となる「当事者」であり、環境回復への責務を負っている”との高い「環境意識」を持つ人材の育成に貢献してきました。

人間は社会的共有財産(コモン)の一つである環境を生活の場と資源を与え再生する存在として、一方的に搾取・依存してきました。環境危機状態にある現在ではこのコモン、BOPは管理し守られるべき存在となり、その意識を全人類で共有し持続可能な社会へと変革し続けることが必要とされます。一方で、我々はこれまで築かれた思想・文化・歴史・慣習・制度・システムの上で生活しており、その一つである資本主義が利益の再配分は得意としますが、タスク(義務)の再配分は得意としていません。

公共の利益、権利の公正配分が求められる現状では既存の体制を見直しながら進める必要がありますが、社会の分断や摩擦を生じさせず社会全体が同意するシステムへの移行にはこれまでの土台を無視してトップダウンの決定で一挙解決はできません。そこで、地道に丁寧に合意形成を図り、和を広げる行動を維持するボトムアップ型の市民活動が重要であり、それぞれの専門性、立場も確保しながら、様々な立場の他者に対し配慮と目配りができる多視眼的な思考と行動ができる人材が集い、育つプラットホームとして存在し続ける「佐賀環境フォーラム」は価値を持ち続けると考えられます。


佐賀環境フォーラムの年間の行事について

講義

講義風景佐賀大学の教授陣はもちろんのこと全国各地で様々な環境分野で活躍する方を講師としてお招きし、講義を行っています。開講当初は、学生と市民が同じ教室で学ぶことができる形態をとっていることが大きな特徴でした。

現在は全12回の講義で構成され、そのうち約半分を外部の講師が講義を行っています。また、オンラインによる講義の配信も行っており、場所や時間を選ばす、より受講がしやすい形になっています。 なお、毎年の講師一覧については、本ページ上に添付しております佐賀環境フォーラムの実績報告よりご確認いただけます。

体験講座

佐賀環境フォーラムでは講義だけにとどまらず、様々なフィールドワークが行われてきました。最近の取り組みを一部ご紹介します。

ごみ探検隊

  • 東与賀海岸での海岸清掃
  • 筑後川周辺でのごみ拾い
  • 佐賀大学本庄キャンパス構内のごみの分別

環境学習会

  • 佐賀市内のクリーク探索
  • 佐賀市内の公園におけるトンボとヤゴの生息調査
  • 佐賀市内の水生生物調査

現地見学会

最先端の取り組みをされている環境関連の施設等、見学をしています。
最近では、

  • 東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」
  • 佐賀市清掃工場
  • 佐賀市下水浄化センター
  • まみずピア
  • 九州積水工業(株)内のビオトープ
  • 大和ハウス工業(株)佐賀支店のZEBシステム

などを見学させていただきました。

ワークショップ

聞くだけではなく自ら調べることで問題の本質を把握することを目的とした「グループワークショップ」と、平成22年度からは学生をNPO法人に派遣し、実際に環境活動を体験することを目的とした「インターンシップ型ワークショップ」を行っています。

グループワークショップ

複数の分野から参加者が興味関心のある分野を選択し、その分野についてグループで調査・研究を行い、考えを深めていきます。「食と環境」、「佐賀大学版EMS」、「シックスクール」、「水環境」など、その時々の環境課題に応じた形で、様々なテーマで研究活動が行われてきました。

また、第9回、第10回の全国大学生環境活動コンテストで、ワークショップから派生した学生グループ「チャリさがさいせい」がグランプリを受賞しました(第9回は「肥前自転車再生同盟」として)。大学内の放置自転車を減らす取り組みや、イベントの際に再生自転車のレンタサイクルを行い、市民の利便性向上や循環型社会の構築を訴える活動が評価されました。

令和3年度は、「環境教育」、「チャリツーリズム」、「フードロス」、「有明海プラごみ」の4つのテーマで研究活動が進められました。

インターンシップ型ワークショップ

令和3年度は、「温暖化防止ネット」、「さが環境推進センター」、「元気・勇気・活気の会(三気の会)」へインターンシップを行っています。参加者は、各種環境イベントにて企画・出展をし、環境分野について普及啓発を行ったり、実際に有機農業や外来種類駆除を行ったり、講義だけでは得ることのできない、体験による学びを深めています。

研究成果発表会

ワークショップ活動を通して得られた成果は、佐賀環境フォーラムの受講者と関係者の前で毎年発表を行い、アウトプットすることにも努めています。

河川清掃

平成18年に「大学内の川をきれいにしたい。」との佐賀環境フォーラムで学ぶ学生たちの声により、途絶えていた佐賀大学本庄キャンパス構内の河川清掃が始まりました。現在では、毎年春と秋の2回の河川清掃を実施しています。

佐賀環境フォーラム15周年記念特別講演会

平成28年に佐賀環境フォーラム15周年を記念して、気象予報士の天達武史さんを招いて、実験やクイズを交えながら地球温暖化の話などを講義していただきました。

イベントへの参加

佐賀環境フォーラムでは、市内各種のイベントへ参加し、佐賀環境フォーラムのPRを行うとともに、環境についての普及啓発活動も行ってきました。その一部ご紹介いたします。

佐賀城下栄の国祭り「きてみん祭ビッグパレード」(平成27年度~平成30年度)

佐賀環境フォーラムのPRを行うとともに、環境にやさしい行動の実践を呼びかけました。

さが環境フェスティバル(平成26年度~令和2年度)

ワークショップの活動を来場者に紹介、発表するためにブース出展を行いました。

公式ホームページでの活動報告について

平成29年度からの取り組みとして、佐賀環境フォーラムを受講している学生は当公式ホームページ上に各自ワークショップの活動状況の記事を投稿することにしています。


受講した学生の声

佐賀環境フォーラムを受講した大学生の生の声をご紹介します。

  • ワークショップ活動などを通して、普段あまり関わることのない自治会や団体の方々の活動を体験し学ぶことができ、とても勉強になりました。私はチャリツーリズム班でしたが、どうしたら自転車の利用促進につながるのかということや佐賀県にどのように貢献するのかを考えることを通して、佐賀県の魅力や自転車の利点を勉強することができました。こうした活動を通して得られたことは、将来社会に出た時に役立つことが多いと思うので、仕事に就いた時に今回の体験を活かせるよう今後も努力していきたいと思いました。
  • はじめは嫌だなと思っていましたが、活動をするなかでSDGsについての理解が深まり、とても楽しく活動できるようになりました。
  • 今までこんなに環境について考え、行動したことがなかったため、とても良い経験になりました。この経験を今後も生かして生活していきたいと感じました。マイバッグを持つことやごみの分別を正しくする、食べ残しをしないなど自分にできることはたくさんあると思うので、環境を守るためにも意識していきたいと思います。
  • 環境学習やごみくい、干潟の見学など間接的に佐賀県のことを学ぶことにもつながりました。学生だけでなく市民の方たちと一体となっての活動も多く、環境保全は一部の人だけの取り組みでは成り立たないと感じました。今後もこの一年で学んだ多くのことを活かしながら環境にやさしい生活に繋げていきたいです。

受講のお申込みについて

令和4年度からは佐賀大学主体の事業として、佐賀大学の授業開放の一科目「佐賀の環境Ⅰ 佐賀環境フォーラムⅠ」となり、開講します。例年、前期での開講を予定していますので、3月に開催される受講説明会にご参加の上、佐賀大学までお申し込みください。詳細は佐賀大学のHPでご確認ください。皆様のご参加を心よりお待ちしています。

佐賀大学 全学教育機構 生涯学習センター
電話:0952-28-8334
E-mail:kouza@mail.admin.saga-u.ac.jp


過去の佐賀環境フォーラムの実績報告

これまでの佐賀環境フォーラムの活動詳細については、過去の実績報告をご覧ください。