7/11 第12回講義「有明海のノリの養殖と赤潮」

こんにちは。佐賀環境フォーラム学生スタッフの山下です。最終回となる今回、佐賀大学 農学部 生命機能科学科の講師である木村 圭 先生に「有明海のノリの養殖と赤潮」と題して講演していただきました。

私たちが住んでいる地球は、地上も海も光合成をする植物に支えられています。今回は、水の中の植物である藻類、その中でもノリについてお話していただきました。

佐賀大学農学部 木村 圭 先生

佐賀の漁業ノリ!

佐賀の漁業といったらノリの養殖ですよね。日本全体で見ても佐賀のノリの出荷量は大部分を占めています。なぜ佐賀県はノリの生産が盛んなのか。それは、有明海と佐賀県の地形のおかげなのです!

佐賀県には大きな干潟、多数の河川があります。また、干満差が大きいため1日2回海がしっかりとかき混ぜられます。これはノリの生産においてとても重要なことです。

しかし、ここで疑問が出てくると思います。「え、それだけだったら有明海の周りにある他の県でもノリの生産量が多くなるのでは?」と。ところが、佐賀に比べて他の県ではそこまでノリの生産が盛んではありません。有明海の周りのほかの県と佐賀県の違いは何でしょうか。

それはやはり地形にあります。九州の地図を思い出してみてください。有明海の周りに注目すると、佐賀は少し奥まったところにありますよね。このことにより支柱式でノリの生産が行えるのです。

「支柱式って何?」と思われる方がほとんどだと思うので簡単に説明すると、支柱を立ててその間に網をつるして行う養殖方法のことです。この方法では、干潮のときは網が空中に浮かび、満潮のときは網が水表面にある状態になります。

でも、なんで支柱式を行うとノリの養殖がうまくいくのでしょう。

このことを考えるには、野生のノリについて知る必要があります。皆さん野生のノリってどこに生息しているのか知っていますか?私は今回初めて知ったのですが、満潮のときは海の中、干潮のときには海の外に出てくるような岩場だそうです。そう、支柱式は野生の環境に近い状態で養殖を行うことが出来るのです!

ここまでざっと佐賀がなぜノリの養殖に適しているかをお話してきましたが、佐賀のノリ産業をこれからも維持していくにはこの佐賀の環境を支えていくことが大事だと分かっていただけたのではないでしょうか。環境を大切にすることはすべてのことに通じてきますよね。

藻類の色素の違い

藻類はなぜカラフル?

藻類っていろんな色をしていますよね。緑はもちろん、赤や黒っぽいものなどいろんな色が思い浮かぶのではないでしょうか。なぜこのようにいろんな色があるのか。

それは、藻類は海の環境に適した色素や体(細胞壁)をしているから!これだけだと「ん??どういうこと」と思われる方が多いと思うのでもう少し詳しく説明しますね。皆さん光合成には葉緑体に含まれるクロロフィルが必要だと学校で習われたのではないでしょうか。

このクロロフィルは緑色をしています。だから、陸上の植物は緑色ですよね。光合成を行う所にはペリフェラルアンテナとコアアンテナという光を受け取る2つのアンテナがあります。そのうち、コアアンテナという部分の成分は陸上の植物も海中の植物も同じです。

ここまで言うと皆さんなんとなくお分かりになるのではないでしょうか。そう、ペリフェラルアンテナの色素が藻類の色に関係しているのです。

「でもなぜいろんな色が必要なの?」、「効率がいいから陸上の植物はみんな緑色になっているんではないの?」と皆さん思われると思います。

藻類にいろんな色があるのはなぜか。皆さんは海といったら何色を思い浮かべますか?青色の人が多いのではないでしょうか。

この青色こそが藻類にいろんな色のものがあることを考えるカギです。実は、クロロフィルはすべての色を利用できるわけではなく、青と赤の色しか利用できないのです。海の中では赤色の光は届きません。よって、青色の光をできるだけ効率よく利用するために補助色素を作っているのです。

わかめなどに火を通すときれいな緑色になるのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。これは、緑以外の補助色素は熱に弱いため、火を通すと見えなくなってしまうからだそう。

いろんな色の藻類にも実は陸上の植物と同じ緑色の色素が含まれているのが分かりますよね。普段何気なく見ていることからいろんなことが分かるって面白いですよね。

ノリには消える時期がある!?

実はノリにもほかの植物と同じように生活環があります。私は、この講義を聞くまでノリは1年中生えているものだと思っていました。しかし、ノリにも受精して胞子を作る時期があるのです。そのため、見える時期と見えない時期があります。養殖を行うためには、この見えない時期のものを網につけるところから始まります。

この時、使うのがなんとカキの殻!これを使って種取りをし、培養をしていきます。そして、培養したものを網につけていくのですが、このときに2枚の網で採苗していくのだそうです。皆さんなぜだかわかりますか?

ヒントはそのうちの1枚は冷凍されるということ。もうお分かりですよね。そう、もう1度養殖を行うためなんです。2回目の養殖は年が明けてから行われるそうです。

佐賀県では1回で支柱を約200万本、張り込み網を約30万枚使うそうです。とてもたくさんですよね。

こんなにたくさんの網が張られるため、懸念されていることもあります。それは潮流への影響です。ノリの生育にも影響する潮流に影響があったら大変ですよね。そのため、佐賀県では以前の40万枚から30万枚へ張り込み網を減少させています。

もう1つ、私が今回初めて知ったことがあります。それは、ノリは何回も刈り取ることができるという事です。この性質を生かして秋芽網期は7日に1回、冷凍網期は10日に1回摘採が行われます。こんなに何回も刈り取ることができるノリってすごいですよね。

ノリは色落ちによってどう変化する?

皆さんノリの養殖には、何が関係していると思いますか?答えは光、水温、塩分、養分、海流、干出です。光と海流、干出については上で少し書かせていただきました。ここでは、養分について書いていこうと思います。

ノリの色落ちについて聞いたことがありますか?ノリは色落ちしてしまうと商品価値が低下してしまい、とても大きな被害が出ます。

なぜ、色落ちすると商品価値は下がってしまうのでしょうか。確かに色落ちしてしまうと見た目が変わってしまいます。でもそれだけじゃないんです。ノリの葉緑体にはフィコピリソームというタンパク質が多く含まれています。そのため、タンパク質のもとになるアミノ酸もたくさん作られます。つまり、ノリにはうまみ成分が豊富に含まれているのです。

ノリの色落ちの原因は海の栄養濃度の低下、特に窒素・リンの欠乏だと言われています。海の栄養濃度が低下するとノリはどうなるのでしょう。海の栄養濃度が低下すると、ノリは栄養不足に陥ります。そうすると、ノリはアミノ酸を作りたいけど元となる栄養がないためフィコピリソームを分解してアミノ酸を作り始めます。これによって、見た目だけでなく味も悪くなってしまうのです。

赤潮は有害?

皆さんお待たせしました。ここでやっと赤潮が出てきます。海の栄養濃度が低下すると赤潮になります。つまり、ノリの色落ちは赤潮によって引き起こされるという事です。

赤潮が1回起こると100億円を超える被害が出ると言われています。では、赤潮はなぜ起こるのでしょう。この原因は、植物プランクトンの一部である珪藻です。珪藻が増えると栄養濃度が低下して赤潮を引き起こします。ここで皆さんに質問です。

皆さんは赤潮と聞いてどんな印象をお持ちになりますか?

あんまりよくない印象の方が多いのではないでしょうか。しかし実は赤潮は全部が全部悪いものではないのです。

実は、赤潮の定義は「海中で微小な生物が異常に増殖し、そのために海水の色が変わる現象の総称」で、害があるものという記述はないのです。

「でも、記述がないだけじゃないの?」と思われると思うので、もう少し詳しくお話しすると、日本の潜在的赤潮原因種は約200種類とされていて、そのうち有害種は約20余種とされています。こうしてみると有害種の方が少ないことが分かります。

ここで先ほど害のある赤潮の原因としてお話した珪藻について見ていきましょう。実は、珪藻も悪影響だけを与えているわけではないのです。というのも、地球の光合成の1/4は珪藻によるものなのです。また、食物連鎖を回す役割も担っています。利益と害は表裏一体とはよく言いますよね。

今後はどのように対策すべき?

珪藻は栄養分が豊富になると増えるだけ増えて、餌がなくなったら死んでいきます。そのため、赤潮にならないために珪藻を増やさないようにするというのは難しく、ほかの生物の餌を減らすことにもつながるので現実的ではありません。

つまり、どれだけ発生時期を正確に予測するかが大事になってきます。正確に予測出来たら養殖時期をずらすことが可能だからです。やはり技術の向上がカギになってきますよね。

受講者から質問を受ける様子

あとがき

このように長い文章を最後まで読んでくださりありがとうございます。今年度の環境フォーラムの講義はこれで最後になりますが、来年度も同様に実施する予定です。これまでの活動報告をお読みになって、興味を持っていただいた方はぜひ来年度参加していただけると光栄です。